関寛之研究

戦前に活動した児童学者・関寛之(1890-1962)は,大著『日本児童宗教の研究』(彰考書院,1944年)を著すなど,(実証的)宗教心理学研究史を語る上で外すことの出来ない人物です。これまであまり明らかにされてこなかった日本における宗教心理学研究の歩みをふり返っておくことが今後の研究にも役立つだろう,との思いから,その第一歩として,関寛之に注目しております。

彼の著作は東洋大学に在職していた時期(1924~1944年)と重なっています。児童学や玩具研究でも多くの著作がありますが,宗教心理学に関連する著作については,管見の限り合計9冊が出版されています。その集大成ともいえるのが上述の『日本児童宗教の研究』であり,本書を(文中の脚注まで)丁寧に読み解くことで,1920年代後半から戦時中に至るまでの宗教心理学研究史をある程度まで浮彫りに出来る,と考えられます。

そこで現在,この『日本児童宗教の研究』を,文中の難読漢字や難解表現を現代訳にあらため,解説を加えて出版するプロジェクトをすすめております。ご協力いただいているのは,「人文・社会科学系 学術専門図書出版」を行う特定非営利活動法人ratik様です。

プロジェクトそのものは2013年9月に立ち上がったのですが,西脇の仕事の都合でなかなか進んでおりませんでした。最近少し時間的余裕が生まれましたので,またプロジェクト再開を,と考えております。非常に大部のため,数回に分けて発表していく予定です。第1弾を何とか今年度中に,と考えております。
(2021年6月12日記)
 
関連する拙論として以下のものがございます。(論文名をクリックするとPDFファイルが開きます。)
 
西脇 良(2020).児童学者・関寛之の生涯――宗教性発達研究の先駆者の生涯―― 南山神学,43,99-124.
 
西脇 良(2012).関寛之の宗教性発達理論について 南山神学,35.135-156.


画像:関寛之の生家跡(長崎県雲仙市小浜町)。地元では「関三兄弟」の長男として知られている。